断捨離し過ぎたら、全ての欲求が消え去り廃人になりかけた話。

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私は全くもって物欲がない。

別に自慢でも卑下でもなんでもないが、私には全くもって物欲がない。いや、正確には、それが生きていく為には本当に必要か?を問い続け、結果的に「そうでもない」と自分なりの答えを知ってしまい、物質的な物に価値を見い出せなくなったからだ。

「使い切れない程のお金が欲しい」

「お金持ちで素敵なイケメンと結婚したい」

「タワーマンションに住んで優雅に暮らしたい」

「モテたい」

「どこそこのブランドの服が欲しい」

「腹いっぱい美味しいものを食べたい」

等、人には少なからず欲求があると思う。 そしてその欲求が、自分の行動を駆り立てるものだと思う。 しかし、私にはその欲求がなくなってしまった・・・。

お金は稼ごうと思えば稼げるかもしれないし、素敵な恋人が欲しいと言って、器用に立ち回れる性格でもない。タワーマンションに住んだところで、生活レベルは変わりそうにない。どうでも良い人にモテたいわけでもないし、ブランドも素敵だけれど、雨風を凌げて、肌に纏う布さえあればそれで良い。食料は腹にさえ入れば全部同じだ、そう思ってしまっている節があった。

こう書くと、かなりひねくれた性格に思えるが、これにはある経緯が関係する。

転職後、生きていけそうにないので断捨離をしてみた

公務員を辞職後(詳細はこちら)、webデザイナーに転職したが(詳細はこちら)、そこでの給与は16万円。家賃は3万から5万になり、ローンも毎月3万円ほどの支払いがある(2018年現在、支払い継続中)。

少ない貯金を切り崩して生活してたが、いよいよ生活費も足りなくなって、路頭に迷ってしまった。齢30歳の頃である。切羽詰まったので、

本当に自分に必要なのは何なのか

を、とことん考えた。そして思い切っていらないものを捨てて、お金にしようと試みた(実際まったくお金にならなかったけど・・・)。

私は、元来ファッションが大好きで、クローゼットに収まりきれないほどの洋服があった。自分が好きで似合わない服があっても「いつか着る」「痩せたら着る」と思って、5年、10年寝かせてた服もある。

また、捨てきれない本や漫画もたくさんあった。私にとって本は財産だったが、それも「いつか読む」「また読む」と思って何年も手につけていない本がたくさんあった。

スキンケア、美容品、ダイエット品にも、人並みにお金をかけてきたが、いつも中途半端で使い切ることが無く、無駄なことばかりしてきた。

自己主張が強そうに見えて、本当は自分に自信が無く、必要以上に他人の目を恐れ、自分の判断に迷いもある為、占いに相当のお金を使った。そしてその結果に一喜一憂し、何が自分にとって最善なのか、分からなくなっていた。

誘われた飲み会には毎回必ず参加していた。多くて週に3回行っていた事もある。「何か収穫があるかもしれない」と思うと、チャンスを逃してはいけないと感じ、強迫観念すら感じていた。”断らない”、それが私の美学でさえあった。また、ストレスをお酒で発散してたこともある。

身軽になりたい

公務員を辞める時、

身軽になりたい

と心からそう思った。ノートパソコン一つで世界中を飛び回り、時間にも場所にも捉われない生き方に憧れた。もしそれが明日出来るなら。小さいカバン一つだけあれば事足りるな、と考え始めた。

そしたら、カバンには何を入れよう。

ジーンズとTシャツで良いな。下着は現地で調達すれば良い。

→スーツとドレスを捨てた。

私の財産とも言える本はどうしよう・・・ネットで調べたり、電子書籍にしよう。

→リサイクルショップに売り、大切な本は電子書籍に保管した。

メイク道具、スキンケアはどうしよう。安くてたっぷり使えるので良いや。

→ブランドもののいつまでたっても使わないスキンケアは人にあげた。メイク道具はプチプラで必要最低限のものにした。

占いなんて気休めかもしれない・・・。占いに助けられた事もあったけど、自分の決断に迷いを生じさせたくない。そもそも毎日が充実してたらそこまで悩まないし、そんな環境や人間関係は手放そう。無理しないでおこう。もし仮に失敗しても成功しても、自分が進んだ道を誇りに思って生きよう。

→占いに全く行かなくなった。

飲み会。これまで断らず色んな所に顔を出したけれど、時間とお金をかけるほどの重要な会かしら?まずは大切な人との時間を大切にしよう。

→これまで、飲みに費やしてた時間を、独立の為の時間に費やした。そして、ほぼ親友としか飲みに行かなくなった 笑

ここまでくると、もはや家も自動車も、そこまで必要ないのではないか?と思えてきた。 華美な装飾のインテリアも、かっこいい高級車でさえ、「資産」ではなく「消耗品」「負債」に思えてきてしまった・・・ 。

身体を作る食べ物や、雰囲気を楽しむ料理さえ、「身体に入ったら皆同じ」と考え、料理も肉を茹でる、くらいの質素なものになってしまった。

最終的には「ノートパソコンと身を纏う布」さえあれば生きていける、という極論に行き着いた。  

何が欲しいのか、やりたいのか分からない

そうなると、本当に物欲がなくなっていく。聞こえは良いかもしれないが、身なりにも気を遣わなくなり、これまで好きだった「音楽」「映画」「娯楽」さえ、生きていくのに無意味なもので、それをやったところで「一銭もお金にならない」とさえ思ってしまった。

完全に無味乾燥な廃人である。

「それをやったところで何の意味があるのか」

「それを持ったところで何の価値があるのか」

自分の好きなもの、好きだったことが思い出せなくなってしまった。 私の心から欲するものってなんだろう。 せっかく手にした憧れの仕事も、そこから先の進め方が分からなくなってしまった。

大切な事は、上流・一流を知ること

そのような生活が1年過ぎ、親友が10年ぶりに沖縄に帰って来たタイミングで、一緒にスタートアップで仕事をする機会が巡ってきた。

彼女はとても好奇心旺盛で、事あるごとに美術館やIT系のイベント、美味しいご飯に誘ってくる。その度に私はだるそうにしながら付いていった(ちなにに昔はそんなイベントが大好きだった)。

彼女は私の生活を目の当たりにし、怪訝そうな顔をした。そしてこんな事を言ってくれた。

相変わらずストイックな生活をしてるけど、本物のデザイナーになりたいなら、上流、一流を知らないといけないよ。

ものすごく「ハッ」とした。 本当にその通りだと思った。

彼女は「文化」や「食事」、「建築物」「絵画」「映画」「美術」など、感性に訴えるもの、娯楽などが大好きな人だった。

私と同じくらいの稼ぎなはずなのに、私よりも、心が「豊か」だった。

単純に「知る」ことに価値を見出し、己の欲求に忠実だった。 その時の私にとっては、そんな彼女が眩しく、羨ましく思えて仕方がなかった。

そして、「上流」「一流」な事は決して卑しいものでなく、自分の創作意欲に良い影響を与えてくれるものだと、思えるようになった。

過度な断捨離は、生きていく上での大切な欲求をなくす

「ミニマリスト」ってすごくかっこよくて、身軽で素敵だなと思い、ちょうどお金もなっかたのでギリギリの生活にチャレンジしたものの、どうやら私は性格的に「黒か白か」を知りたがる傾向があることと、「やるなら徹底的にやる」性格が災いしてしまって、結果的に自分の大切なものが分からなくなってしまった。

ただ、その結果から分かった事としては、

★我慢する事に慣れ過ぎてしまっている

★無理を無理と思わない

そんな自分がいて、本当に自分が心から感じている気持ちや、何かを欲しいという気持ちを、これまで我慢してきてんだな、という事。

ただ唯一良かった点としては、物資がないところでもどこでも生きていけるかもしれない、という自信は身についたこと。

そして、今、目の前に裕福な人や成功している人を見ても、ただ単にすごいとか思うのではなくて、その人の生き方やバックグラウンドを感じ取り、どれだけの苦労をしてきて、どれだけのものを手に入れ、どれだけのものを捨ててきたんだろうかと考える想像力、その人が努力して手に入れたステータスを剥がして、その人自身の本来の魅力を見ることには、長けてきたと思うことだ。

つまり、今ある事実や常識だけの上辺なものでなく、さらに本質が何なのか考察出来るようになった。

無駄だと思えることにも、意味や価値があると信じたい

私は、無駄なことを自分で試してみないと気づけない程、不器用でくそ真面目なところがあるので、極端な断捨離をしないと、自分の感情にも気づけないほど、鈍感だ。

逆に、人目は気にし過ぎるほどで、人の気持ちや態度にすごく敏感で、繊細なところがある。

断捨離をする時も、そんな自分の感情さえ手放したくて、何にも執着さえしなければ、もっと人に優しくできるとも思っていた。

けど、本当は、私はもっと「自分の感情」を何よりも優先すべきで、「楽しい」「美味しい」「悲しい」「気持ち良い」「不快だ」「嫌だ」という素直な気持ちに耳を傾けたいと思った。

自分の気持ちに鈍感な私が、今のままでは、誰かを感動させるものは作れないのかもしれない。 もう少しだけ。もう少しだけ、自分を大切にしよう。私には、もっともっと無駄な時間が必要かもしれない。

その無駄な時間がいつか何かで役に立てば良いし、別に立たなくても良い。

断捨離した結果見えてきたことは、「自分に鈍感で、本当の自分を考えてみたけど、結果まだよく分からない」ことと、「欲求は、人の行動を促進する」ということだ。

今は少しずつ、自分の感情に向き合っていこうと思っている。 たまには、豪華な食事と綺麗なドレスを着て、どこかで誰かと、無駄なおしゃべりを楽しみながら。

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