もう後戻りできない。震えて出した退職願。

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これを提出したら全てが終わる。

2016年2月、上司に退職願を出す時の事を今でも覚えている。 今まで自分が築き上げてきた実績や成果、ポジションも全て消えること意味していたからだ。

このまま公務員をやり続ければ、部長クラスになれると評価をいただいていた。しっかりとした仕事に就き、仲間にも恵まれ、普通に結婚して、幸せになれる事は分かっていた。   ・・・分かりすぎていた。  

そう考えると、ドキドキして手が震えて、自分は間違っているのではないか、道を外しているのでないかという思いが何度もこみ上げてきた。

勤めて5年、嫌なこともたくさんあったが、同僚や上司、先輩は皆素敵な方ばかりだった。 女性に至っては、特に優秀だった。

私はずっと男社会で生きてきた人間で、女性特有のかよわい雰囲気に戸惑う部分があったりするが、皆男気があって、バリバリ働く。民間企業にいたら相当稼いでいたんだろうな、というくらいキャリアウーマンだった。同僚や上司、先輩には相当お世話になった。そして「人の為に働く」という姿勢を学んだ。感謝してもしきれない。

でも、人の人生より自分の人生を生きたい。

公務員は、誰かの幸せや生活の為に生きる。もちろんその考えは十人十色で、自分の生活の為に仕事をしている人もいるだろう。 でも私は、少なくともそういう気持ちで業務にあたっていた。

だけどそろそろ限界だった。誰かの幸せを願う程に私は人間ができていないし、日々市民に暴言を吐かれてまで平静でいられるほど、天使でもない。

誰かに嫌われてまで鬼にもなれないし、弱い立場の人間を見捨てるほど悪魔にもなれない。

ただただ、自分の湧き出る欲求に従いたかった。「やっぱりデザイナー業を忘れられない」 。 そうして私は、29歳にして、身を削ってまで手に入れた安定を、捨てた。

なので、こうやって辞めました。

まずは、上司に1ヶ月程前から口頭で相談することが常識と礼儀らしい(私はビビって、2週間前に言ってしまった・・・)。

優秀な人なら、99%の確率でおそらく引き止められる。 それでも、自分の気持ちが変わらないのであれば、職場や人事課に退職願のフォームがある。 そこに日付けと名前を記入する欄があるので、書き込んだ後、上司に渡す。 課長、部長まで決裁が終われば、もう後戻りできない。

2016年3月、退職者の会があった。 勤労者に対してこれまでの働きに感謝し、表彰をする、お疲れ様会みたいなものだ。 私の辞めるタイミングが年度末だったので、定年退職の方たちと顔を合わせて、それは何とも気まずかった。

〇〇様、勤続40年。

とか大きい声で皆の前で発表されるわけです。 その中で、

kinjo Aimiさん、勤続5年!

とか紹介されるんです。  

・・・気まずいわ。  

皆、

この子根性ないわね・・・若いくせに

とか思ってるのだろう。 そんな感情に浸るのも、1分。

2016年、春。晴れて普通の人に戻ることになった。 これで人目を気にしないで生きていける。 不安よりも爽快感の方が上回っていた。 これから、辛い時期が始まるとも知らず・・・。

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